The 2Ys' Album
Yuko:自然の生み出す音に触発された作曲家・ピアニスト
Yoko:自らのルーツであるアイヌ民族の自然と共生する文化・伝統を現代に投影するボーカリスト
自然との共生という共通の思いを持つ2人が共鳴しあって紡ぎ出されたのが本アルバム2Y’sである。
You can listen a music clip on YouTube.
https://www.youtube.com/watch?v=NB-XX29zBDc
1 Kasorap 〜ケソラプ〜 4’48
産みの母の声がする
育ての母が歌う
金色の踊り
金色の宴
私の心は浜辺で膨らむ
金色の踊り
金色の宴
私の心は浜辺で膨らむ
産みの母の声がする
育ての母が歌う
美しいイナウ 神のイナウ
母の待つ
空の国へ
美しいイナウ 神のイナウ
作詞:豊川容子 アイヌ語訳:川上将史 作曲:矢部優子
Kesorapはアイヌの想像上の霊鳥。孔雀に似た姿をしている。詩は知里幸恵の神謡「kesorapの神」から着想を得た。iomante(霊送り)の儀式で母の待つkamuy(神)の国へ、inaw(木の御幣)を抱いて旅立つ。美しい羽根を持つケソラプが沈黙を守り、やがて大きく羽ばたいていく——
目の奥にそんな光景を思い描きながら、曲を書いた。
2 Lotus 4’51
音は海の波
氷の大地を舞う
私は誰
希望と後悔を
のせた計りに
生きる意味を問う
いつか聞いた
天の声を
忘れて生きる
わたしは誰
一筋の光を
手のひらに乗せ
背中の声を聞く
正しさに苦しみ
弱さを憂う
それなのに
今を強く生きている
わたしは誰
作詞:豊川容子 アイヌ語訳:川上将史 作曲:矢部優子
この曲は、ひとり旅で心に浮かんだ想いから生まれ、もともとはピアノ曲として書いた。後に容子さんが詩を添えてくれ、その言葉があまりにも自分の胸に響き、息をのんだ。 生きる意味と、自分の存在を問う歌詞。
世間の正しさに苦しみ、自分の弱さを憂い、それでも今を強く生きている、わたしはだれ?と歌っている。
3 ブヌン-天へ祈る聖なる声 Bunun — Sacred Ascent 4’38
作曲:ブヌン族、矢部優子
台湾の先住民族・ブヌン族の八部合唱に感銘し生まれた楽曲。
旅先で出会ったブヌンの人々の合唱を録音し、その祈りを音楽へと紡いだ。
山々に反響しながら重なっていく声は、言葉を超えて心に届き、
自然と人と祈りがひとつになる瞬間の美しさを、今も耳に残っている。
本作において八部合唱を提供してくださった文化財団「布農部落休閒農場」の皆さまに、深い敬意と感謝を捧げます。
もしこの音が皆様の心に届きましたら、どうか彼らの文化を守り、次世代へつなぐ活動への支援をお願いします。
4 Acikara〜アチカラ!〜 4’33
きゃあ 大変だ!
私の宝物 ないの!
台所にも敷布団の下も 囲炉裏のそばにもないの!
探してるの!
昨日から今日まで 朝から晩まで
ずっとずっとずっと!
アチカラ!(驚いた時の言葉)
あそこに 見えるもの
私の宝物
まさに!
アチカラ!
大事なもの
私の宝物 それはなに?
シトペラ(団子を混ぜるヘラ)
作詞:豊川容子 アイヌ語訳:川上将史 作曲:矢部優子
アイヌ語をジャズテイストで歌ってもらったらどうなるのだろう?と挑んだ曲。
Cise(アイヌの伝統的家屋)の中で紛失した宝物を探す様を歌っている。
最後の歌詞は「大事なもの。私の宝物。それは何?sitopera(団子をかき混ぜるヘラ)。」
5 Sinrici hawehe〜祖先たちの声〜 3’30
今年はタンタカがタンタカがいるよ
オタストゥンクルが小さな弓と小さな矢で遊ぶ
雀のサケヘ
ガマの花穂 サラサラ揺れる
※タンタカ 松川鰈
※オタストゥンクル 北海道東部地域の物語の主人公の名前
※サケヘ 神謡の合間に入るリフレイン
作詞:豊川容子 アイヌ語訳:川上将史 作曲:豊川容子
その昔、アイヌたちは人が集まると囲炉裏の側でsintoko(行器)の蓋を叩いて拍子をとりながら歌い始め、ukouk(輪唱)が始まり、どんどん調子が上がっていくと踊り始めたという。そんな祖先たちの様子を想像して作った歌詞。
6 ikomososo ~それが呼び覚す~ 3’59
作曲:矢部優子
幼い頃、大好きでよく観ていた手塚治虫の『ジャングル大帝レオ』『リボンの騎士』『火の鳥』からインスピレーションを受けて生まれた曲。
鳥のさえずりや稲妻の響きをオーケストラで描きながら、アイヌの森や川に息づく精霊の存在も感じられる、自然と音の交差点のような作品。
7 風紋 2’14
砂漠のフクロウがいいました
―――夜はだれも通りません。
いいえ
月はいいました
―――ごらんなさい 風の足跡です。
今夜も風が通ります
作詞:内田麟太郎 作曲:矢部優子
絵詩作家の内田麟太郎さん最新絵本「ともだち」の中にある風紋の詩に触発されて作曲した楽曲です。
8 Pehe utar rimse〜雫たちのリムセ〜 5’04
作曲:豊川容子、河元哲史、矢部優子
リムセは踊りという意味。
水琴窟の音が、洞窟の中で楽しく宴をしているように聞こえた。
その宴にそっと混ぜてもらうように声、ピアノ、チェロを即興で添えている。
9つたふ 5’05
芳葩茨葎(ほうはしりつ)や
朽葉(くちは)の黙(しじま)
藍(あい)に揺れる雨音は
緋(ひ)の谷の雪になり
清らにこの身に降りそそぐ
さかまく さすらふ
いさよう さぎらふ
うたう
作詞:輝優 作曲:矢部優子
この曲は、日本語と向き合ってみたかった気持ちから生まれた。
アイヌ語の曲が多いこのアルバムの中で、日本語でも音と言葉の関係を確かめてみたいと思った。作詞では、あえて古語や雅語を用い、言葉そのものの響きや時間の深みを大切にしている。
言葉を音楽の素材として捉え、日本語の古語がメロディと溶け合う響きや、言葉と音の重なりを意識して作った。
10 コロポックル〜蕗の葉の下で〜 2’32
作詞:豊川容子 アイヌ語訳:川上将史 作曲:矢部優子
korpokkur(蕗の下に住む存在)のおじさんが、雨が止まないので蕗の下から出られずに文句を言いながら、結局は「寝るかー。」と寝てしまうという歌詞。
ピアノが「雨の精」として問いかけ、声がコロポックルとして応える――まるで二人が会話を交わしているかのように表現している。
ライナーノーツ 矢部優子
ikos utash kuru ―私はその声に呼び覚まされた―
大地の記憶に息づく、祈りのような声。
やがてそれは内なる鼓動と重なり、ひとつの音の旅として静かに響き始めた。
⸻出会いと旅
アイヌの歌姫・容子さんが歌う子守唄「60のゆりかご」を聴いたとき、
どこか懐かしく、それでいて名前のない不思議な感覚が胸に満ち、涙が溢れた。
そのアイヌ語の言霊に導かれるように、私は北海道へ旅立ち、
幾つもの奇跡のような出会いを経て、このアルバムは生まれました。
⸻自然からの教え
東京の奥座敷と言われる多摩の緑豊かな土地で育った私にとって
鳥の囁き、川のせせらぎ、駆け抜ける風...
自然の声は、いつも音楽の原点です。
「生きていること」そのものが音楽の源であると、静かに教えてくれました。
その教えを、自分なりに形にしたいという想いが、
いつの間にか心の奥で静かに育っていたのかもしれません。
このアルバムには、こうした自然の命の音がたくさん詰め込まれています。
これらの音が、容子さんの歌声や私のピアノに寄り添い合い、
ときにチェロやドラムが重なり、音楽に新たな息吹と力強さを添えてくれました。その響きは、まるで大地の呼吸のように脈打ち、
静と動がひとつになり、音が層を成して豊かに広がる瞬間を描き出しています。
⸻音の向こうへ
大地に響く声や旋律は、心の奥に届き、
忘れていた感覚や記憶を呼び戻す。
音は国や言葉、文化をも越えて、
静かに優しさの源へ届くことを願って。
——命が奏でる音に、耳を澄ます
私達の音楽コンセプトに深い理解をいただき本アルバムの企画と制作を実現していただきましたUNAMAS Label Mick Sawaguchiに深い感謝の意を表明します。


